
最終章 先駆者の道 完
「パパ!パパ!AED!はやく!はやく!!AED!」あゆみの声が会場内に響き渡る!浩吉は心肺停止状態だった。
そして、「みんなはなれて!」あゆみが電気ショックを浩吉に与えた!
蘇生?一瞬浩吉が目を開けた 「あゆちゃん・・・パパは最高にしあわせ・・・あ・り・が・と・う」
その言葉を最後に息を吹き 返すことは無かった・・・。浩吉70歳の春だった・・・。
「なんでよ!なぜなの!これからがスタートなのに!なんでよ! 精密検査は何も異常無かったじぁないの!」
あゆみの叫び声が会場内に響き渡る! 祝賀ムードが一変静まりかえる・・・。
何もかもが順調に進んで浩吉の想像を遙かに超えて 世界的に見ても類を見ない一大プロジェクトのスタートの日に浩吉は あっけなく散ってしまった・・・。
気が動転するあゆみの耳元で声がする・・・
「あゆみはん!あゆみはん! 悪う思わんとってな~わてかて現世に生きてみたいねん・・・悪う思わんとってな~」とアノヨンの声が かすかではあったがはっきりと聞こえた。あゆみはアノヨンのささやきの意味など理解する余裕など全くなかった。
式典は中断され報道陣やマスコミはこの事実を大きく取り上げ速報で伝える等会場内はその事で ざわつき始めていた・・・。
あゆみは人目をはばからずに泣き叫んだ!あゆみは悲しみもあったがそれ以上に 悔しさが込み上げていた。
浩吉の最愛の妻もあゆみと共に泣いていた・・・。突然の事に会場外では暗殺事件でも 起きたかのようにざわついていた・・・。オープニングセレモニーの進行も止まっていた・・・。
それからどのくらい時間が過ぎただろうか・・・あゆみは涙を拭いながらマイクをとって
「父・・浩吉がこの めでたき祝賀パーティーの席で他界しました!父は最高の時に息を引きとったのです!親バカだった父の夢が今大きな 大きなプロジェクトに膨れ上がり皆様のおかげで素晴らしいリゾートホテル型の病院が出来上がりました!
きっと ”PIONEER CARE RESORT AYUMI”を皆様から愛される唯一無二の施設にするべく頑張って参ります!
これからもご指導 ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」と涙をこらえてしっかりと言い切った。
そして浩吉の亡きがらと共に 会場を後にした。 それから5年の月日が経っていた。
「おぎぁ~おぎぁ~」と院内に響く大きな赤ん坊の声・・・。 あゆみ34才初めての出産である。
「佐々木さん!元気な男の子ですよ!おめでとうございます!」と助産師の声。
そうあゆみはドクターPOSTの佐々木と結婚!浩吉の三回忌を済ませて間もなく二人は籍を入れていた。
浩吉の他界という試練以外は全て順調だった。 あゆみは「どっちに似ているかしら?可愛い~」と言った次の瞬間
「あゆみはん!やっと現世に来れたわ~ 浩吉はんには悪い思うてます・・・わてが現世来るための浩吉はんが身代わりですわ・・・良い子に育ちますさかい 勘弁してや~」と間違いなくアノヨンの声だった・・・。
そのすぐ後に「あゆちゃん!パパやで~アノヨンは元はといえばわての子やさかい身代わりはパパにとって嬉しいことや パパは最高の時に旅立てたんや!あの世から見守るさかい心配したらあかんで~」と 浩吉の明るい声が聞こえてきたのである(^_^)。
完